聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「ひどい傷。血が……」
 胸を縦断するミミズ腫れも気になったが、額の血はさらに彼女の胸を締め付けた。

「問題ない」
 アルウィードは平然と答える。
 彼は自らの額を傷つけ、血を流した。それによりインクで描かれた魔法陣を消したのだ。
 すぐに魔法で縄を切った。扉を開けたら階段があり、天井付近の出口が塞がれていた。
 彼はそれを魔法で吹き飛ばした。真上にベッドがあるとは知らずに。

「でも、傷だらけだわ」
「心配してくれるのか?」
 からかうような声音で三千花を熱く見つめる。

「当たり前じゃない」
 三千花は照れて不貞腐れた。

「いちゃつくのはそれくらいにしてくれないか。無防備すぎだろ」
 うんざりしたように、蓮月が言った。
 振り返ると、ライエルがロレッティアを、蓮月が私兵を拘束していた。

「問題ない。俺からは君たちの動きが見えていた」
 アルウィードが応じる。

「すばらしい手際でしたな」
 ライエルが蓮月を褒める。
「……ありがとう」
 蓮月は照れ臭そうに答えた。
 ライエルはすでにロレッティアと私兵の背に魔法の封印を貼っていた。手早く二人を縛る。

「貴殿、名は」
 アルウィードがたずねる。
「ライエル・ドラングールです」
 ライエルは自らの上着を脱いで渡す。

「悪いが魔力はさほど回復していない。ライエルが頼りだ」
 アルウィードは上着を受け取り、羽織る。

「承知いたしてございます」
 ライエルはズボンのポケットから石を取り出し、窓から放り投げた。
 石は上空に飛んで行き、閃光を放った。

「この合図で近隣の兵が参ります」
「わかった」

 アルウィードはホッと息をついた。
 縛られたロレッティアは床に座り込み、彼らを睨んでいる。

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