聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「殿下、お治しいたします」
 ライエルはアルウィードに手をかざす。

 傷が見る間に癒えていく。
 三千花はダウナルドの人選の確かさに感動した。

 それに比べて自分ときたら。
 三千花は服の埃を払う蓮月を見た。

「なんだよ」
「……なんかごめんね」

「よくわからんが、俺に対して失礼なこと考えただろ」
「そ、そんなことは」
 三千花は慌ててそう答えた。

「黒幕は誰だ」
 アルウィードがロレッティアに問う。
「レオルーク様ですわ」

 アルウィードは顔をしかめた。
「嘘だ」
「本当ですわ。王位を脅かすアルウィード様が邪魔だったんですの」

「あの人は王座に興味がない。わかりやすい嘘をつくな」
「仕方ありません、本当のことを言いますわ。ユレンディール様ですの」

 あっさり認めるロレッティアに、アルウィードは不快そうに眉根を寄せた。
「それも嘘だろう。最後までひっかき回すつもりか」
「真実をお教えします。エルンレッド様とリーンウィック様が結託しましたの。ほら後ろ、犬に変身してとびかかろうとしてますわ!」
 三千花は思わず後ろを振り返る。
 が、後ろには何もない。

 アルウィードはロレッティアから目を離さない。
「ありえない嘘をつくな。調べればすぐわかることだぞ」

「どうぞお調べくださいませ。私を拷問されますか? それとも禁断の自白魔法をかけますの? 精神が崩壊するという噂の!」
 アルウィードはその挑発に応じない。

「レオルーク様のせいであることは確かですわ。せめてあの人が私を見てくれましたら、貴方をあきらめることができましたのに」
 三千花はその言葉でようやく気がついた。
 彼女が最初から攻撃的だったのは嫉妬していたからだ。

「あくまで人のせいか」
 アルウィードは吐き捨てた。

 人の気配を察し、入り口に目をやる。
 屋敷のほかの私兵が集まってきた。ベッドが吹き飛んだ轟音で駆け付けたのだ。

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