聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「これ。拳銃」
 ガラスの向こうに、装飾過多の銀色の拳銃が展示されていた。

 アルウィードは顔をしかめた。
 蓮月も顔をしかめていた。

「使ってほしくない」
「使えるかどうかわからん」
 アルウィードと蓮月が答える。

 そのとき、爆発音が響いて建物がゆれた。
「くそ、追いつかれた。博物館つぶされて生き埋めじゃね?」
「……いや、それはない」
 アルウィードは答える。

 ロレッティアは生け捕りを狙いにくるはず。
 実際、兵をけしかけるときには捕まえろと言っていた。

「くそっ」
 蓮月は上着で(こぶし)を包み、ガラスを割った。

「器物損壊罪だ」
 蓮月は自嘲した。
「ああ、ここへは建造物侵入罪だな」
「緊急避難よ」
 三千花のフォローに、蓮月は口の端だけで笑った。

 中の銃をとり、リボルバーのシリンダーを開けて、同様に展示されていた弾を薬室にこめる。計六発。

 弾丸には薬莢(やっきょう)がついているが、火薬はちゃんと入っているのか。入っていたとして、湿気(しけ)ってはいないのか。見ただけではわからない。

「メンテナンスされてないだろうから、こんなもん使えねえぞ。不発ならまだしも暴発の危険もある」
「そっか、ごめん、無知で」
「脅しにはなるかもしれん」
 アルウィードは近くにあった展示物の中から剣を手にした。

「じゃ、私は楯を」
 と三千花は言い、展示されていた甲冑の盾を持ち、その重さに驚いた。

「三千花には無理だ」
 アルウィードに止められ、あきらめた。

「三千花にはこんな思いをさせたくなかった」
 アルウィードに抱きしめられ、三千花は切なくなる。

「あのさあ、俺もいるんだけど」
 油断するとすぐ二人の世界に入る三千花とアルウィードに、蓮月は呆れる。

 その目の隅を、何かが横切った。

 なんとなく目で追う。
「なんだ猫か」
 つぶやいて、蓮月は二度見する。

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