聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 ロレッティアがまた彼らに手を伸ばした。
「伏せろ!」
 叫んで、蓮月はスプレー缶を彼女に投げる。

「こんなもの!」
 ロレッティアはスプレー缶に炎を発した。

 缶は爆発した。
 ロレッティアは吹き飛び、展示ケースのガラスを突き破って倒れた。

 三人は顔を見合わせた。

 このまま逃げるべきか。
 だが、大量に血を流して動かない彼女を見たアルウィードは、二人に待つように言った。
 剣を構えて慎重にロレッティアに近づく。

 彼女は頭を打って気を失っていた。
 その腹に、ガラス片が刺さっている。

「死なせるわけにいかない。手を貸してくれ」
 アルウィードは剣を投げ捨てた。

 蓮月に手伝ってもらい、展示ケースから彼女を運び出す。
「止血をしなくては」
 蓮月は震えていた。

 スプレー缶を熱すれば爆発するのは知っていた。だが、一瞬であれほどの爆発を引き起こすとは思っていなかった。炎の原理が違うのか、よほど高温だったのか。

「治癒魔法を使う。完全には無理だろうが、なんとかなるだろう」
 アルウィードはガラス片を抜き取り、手を傷口にかざした。残り少ない魔力を絞り出し、彼女の傷を治す。キズが塞がり、血の流出は止まった。

 三千花はおろおろとそれを見ていた。
 傷が治って意識を取り戻したら、彼女はまた攻撃してくるのではないだろうか。

 アルウィードはロレッティアのそばで片膝をついて座り込んでいた。息が荒い。蓮月がそれを支える。

「俺はいい、こいつを拘束してくれ」
「拘束って言っても」
 蓮月は今は手錠を持っていない。

「使って」
 三千花は自分のベルトを外して蓮月に渡した。
 ロレッティアの体をうつ伏せにして、両手を後手に縛る。

「なんだ、助けたのか」
 ここにいないはずの人物の声がした。

 三人は驚いてそちらを見る。
 レオルークがニヤニヤ笑って立っていた。

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