聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜






「君がアルを助けるまで待ったよ。だからもういいかな、と思って来たんだけど」
 王子の声には愉悦が含まれていた。

 三千花の鼓動が早くなった。
 なぜこのタイミングで現れたのか。

 アルウィードを見ると、彼はレオルークを睨んでいた。
 蓮月は戸惑って両者を見比べる。

 レオルークの青い瞳がランタンの薄い光できらりと光った。

「さっきの黒猫はこいつだ」
 アルウィードが言う。

「こいつ呼ばわりはひどいなあ」
 顎を撫でて、レオルークは言う。

「そいつが犯人なのに、助けるんだ?」
 レオルークの目がロレッティアを見ていた。

「捕まえて主犯を吐かせる」
「言うかなあ。死なせておいたほうが良かったんじゃない?」

「死なせない。罪を償わせる」
「あれだけやらかしたらどのみち死刑じゃん?」

「きちんと捜査するためにも必要なことだ」
「それで、死の恐怖を味あわせながら死刑の日を待たせるの? ひどくない? 君たちの勝手じゃん。命への冒涜じゃない?」

「そうは思わない」
 アルウィードはきっぱり言い切った。

「つまらないなあ。昔はいちいち動揺してくれたのに」
 レオルークは肩をすくめた。次いで、三千花を見てにっこりと笑う。

「無事に弟を救出したんだね。すごいよ、魔法も使えないのにさ」
「助けに来てくれたのですか?」
 三千花は言う。そんなわけない、と思いながら。

「君は善良なんだね。私はそういう人間が大好きだよ。アルウィードといい君といい、大好きだ」
 何かがおかしい。
 蓮月も緊張しているのが伝わってきた。

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