聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「私はね、人を愛しているよ。愚かで、かわいいじゃないか」
 こんな人が王になったらどれだけの人を不幸にするんだろう。
 三千花は恐怖を感じた。

「私が王になったらいろんなことできるなあって、ちょっとだけ楽しみなんだ。戦争もきっと面白いよね。いろんな思惑が(うごめ)いて時代が動くんだよ。面白そうだなあ」
 嬉々として語るレオルークは、まるで将来の夢を語る少年のようだ。

 彼はさらに目を輝かせて三千花を見た。
「そうだ、君、私と結婚しよう! 世界を変えるという人と結婚したら、世間はどう反応するのかなあ? どうせなら、あのアホな思い込みを利用しようか。異世界は流刑地、現在生きている人は犯罪者の子孫ってやつ。暴動とか起きるかなあ?」
 絶対に嫌だ、と三千花は思う。

「あ、別に君じゃなくてもいいのか。もう一人いたもんね。いっそまた向こうから連れてくるとか。たくさん候補がいたら大混乱で、それも楽しいかも?」
 楽しい遊びの計画を立てるみたいに言うレオルーク。

 三千花は悟られないように周囲を見回した。
 避難しようとした経路にはレオルークが立ちふさがっている。ならば戻るしかない。

「アルウィード、動ける?」
「動けなくても動く」
 彼は答えた。
「最高の返事ね」
 三千花は緊張してレオルークを見た。

「何? 何するの?」
 レオルークはウキウキと三千花を見る。

「走って!」
 三千花は蓋を全開の塩胡椒ボトルの中身をレオルークにぶちまけた。同時にアルウィードと蓮月が走り出す。

「何それ?」
 レオルークは指でさっと前面に魔法の防御壁を作る。

 胡椒は舞い散り、防御壁を超えて彼に降り掛かった。
 レオルークは猛烈なくしゃみに襲われた。目にも入ってしまい、涙が出る。

「なんだこれ。ックション」
 くしゃみがおさまらない。

「面白いなあ!」
 レオルークは笑いながらくしゃみをした。

< 278 / 317 >

この作品をシェア

pagetop