聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「誰にでも魔力はあるんでしょ? 私の中の魔力を使えば、転移とかできない?」
「無理だ」

「ほかはできる?」
 アルウィードは嫌そうに目を細めた。
「できるかもしれない。だが、君がどうなるかわからない」

「死んだら何もできなくなるわよ。私を嫁にしたいのか死体にしたいのか」

 三千花が(すご)んで見せる。
 アルウィードは驚いたあと、弾けるような笑顔を見せた。

「嫁にしたいに決まってる」

 彼女の頭に手をまわして引き寄せ、口づける。三千花は照れて顔を伏せた。そのまま彼にもたれる。アルウィードは彼女の頭を抱くように手を添えた。

「……せいぜい攻撃魔法が一発だ。それでも倒すほどの威力はないだろう」
「そっか」
 三千花は暗い声で答えた。

「あの人が探索魔法を使ったらすぐにこの場所がバレるかな」
「かもな」

「中に転移されたら詰むね」
「知っている場所にしか転移できないからそれはないはずだが」
 そういえばそんなことを前にも聞いた気がする。
 少しだけホッとした。

「戻ったらすぐに婚約の儀式をしよう」
 白いドレスを見ながら、アルウィードが言った。

「な、何を急に」
 アルウィードを見ると、彼は優しく三千花を見返した。

 三千花は顔から火が出る思いで立ち上がった。
「何かこの中に使えるものあるかな」
 周りを見回して言った。

 今さら、蓮月がずっと背を向けて立っていたことに気がつく。

 聞かれた。恥ずかしい。
 彼はあえて背を向けていてくれたに違いないのだ。

 三千花はなおさらいたたまれなくなって周囲を探した。

< 282 / 317 >

この作品をシェア

pagetop