聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
ロレッティアが意識を取り戻したとき、周囲には誰もいなかった。
目の前には床がある。全身が怠く、床の硬い感触が不快だ。
立ち上がろうとする。が、手が動かない。
両手が後ろで縛られている。
ロレッティアは顔を歪めた。
意識を集中して、気をつけて拘束具だけを焼こうと炎を発生させる。
炎はすぐに彼女を自由にした。
が、少し腕をやけどしてしまった。
「あの女のせいで」
三千花の連れていた見慣れない服の男が見慣れないものを投げたせいで爆発したのはわかった。
あの男はなんなのか。聖母があちらから連れてきたのか。屋敷では目立った動きをしていなかったので油断していた。
「どうでもいいことですわね」
邪魔なら殺せばいい。
ロレッティアは大きく息をついた。
「あの女の前でアルウィード様をわたくしのものにいたしましょう」
聖母はどれだけ泣くことだろう。
アルウィードの血を浴びて、その体に折り重なるように自分の命を捧げる。聖母の追いつけないところへ二人で逝くのだ。
聖母の悲鳴は天の祝福のように響くだろう。
ロレッティアはうっとりとその瞬間を想像した。
何かが崩れる轟音が聞こえた。
あちらですわね。
落ちていた剣を拾い、ロレッティアは毅然と歩き始めた。