聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜





 レオルークは立ち上がる。
「また形成逆転だね」
 うれしそうに彼は言った。肩から血を流しながら。

「婚約者殿も気の利いたことをしてくれる。君たちは私に封印を貼ったんだね?」
 背中をやけどしたのか、少し気にする素振りを見せた。

「いやあ、油断した」
 レオルークが指を向けると、銃を構えた蓮月の両腕が折れた。

 不気味な音が耳に届き、三千花は体を震わせた。
 レオルークがピンと指を立てると、さらに蓮月の足が折れる。

「う……」
 蓮月が(うめ)く。

「めんどくさい。もう殺しちゃおうかな」
「やめて!」
 蓮月の前に飛び出した三千花をレオルークは魔法で突き飛ばし、アルウィードを壁におしつけた。

 改めて蓮月に指を向けようとした時。
 突如、レオルークの腹に激痛が走った。

 驚いたように腹に生えた剣を見る。
 剣は背から腹に突き通っていた。

 レオルークは振り返った。
 ロレッティアが燃えるような目で見ていた。


 * * *


 ロレッティアは朦朧(もうろう)とする意識の中で、状況を見ていた。
 自分の命は残り少ない。

 せめて。

 ロレッティアは三千花の顔を目がけて炎の魔法を発した。やけどで醜くしてやろう、と思ったのだ。

 だが、炎はレオルークの背を焼いた。

 ああ、狙いがずれた。

 薄まる意識で考える。

 最後の力で、あの人を。

 ロレッティアは落ちている剣を見た。
 最愛の人を燃やしたくはなかった。
 アルウィードの胸を狙って魔法で剣を放った。

 だが、目標を誤った。
 レオルークの背に刺さるのが見えた。

 なぜ最後まであの人に想いが届かないの。

 それが最期に思ったことだった。
 
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