聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
思い出して、三千花は恥ずかしくなる。
あんなたくさんの人の前でキスを。
しかもあのとき、まだ蓮月は瓦礫に埋まったままだった。命の無事はわかっているとはいえ、助け出してもいないのに、キス。
なんだかとても申し訳ない気持ちになる。
その後はすぐに蓮月を助け出し、アルウィードは治癒魔法を蓮月にかけた。
「応急処置程度には治したが、無理はするなよ」
と蓮月に言った。
アルウィードはその後、三千花と手をつないだ状態で負傷した警備兵たちの治癒をしてまわった。三千花と手を繋いでいると、魔力をどれだけ消費しても彼は魔法を使えるようだった。
「これは聖母の力だ」
とアルウィードは言って回った。
「違うからやめて」
三千花はそのたびに否定したが、兵士たちは「伝説の聖母様が」と感激した様子だった。
無事だった兵士たちは応援に来た兵士とともに博物館に埋もれた者たちを救出に動いていた。
明け方になってリーンウィックは犬たちとともに保護された。
彼はレオルークの乱入で危険を察知し、犬たちを外に導こうとした。だが、一歩遅く、半数が殺されてしまった。
シェリナは三千花の世界でいうところの無縁仏として葬られることになった。
ロレッティアの遺体は回収され、両親の元に帰された。
レオルークの死体は発見されなかったという。爆心地にいたので、そういうことなのかもしれない、と三千花は思った。
三千花はアルウィードを思う。
彼女には兄弟姉妹がいないから、そういう存在には憧れすらあった。
だが、アルウィードは実の兄と仲が悪く、その兄がこんなことになってしまった。
今、どんな気持ちでいるのか、心配だった。