聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 指輪をマジマジと見る。
「この世界に、この指輪かリガードリングの概念を持ってきた人がいるのかしらね」
 晴湖がつぶやく。

 アルウィードは知っていたのだろうか。
 最初に試着室で遭遇したときから彼女への思いを伝えていたのだろうか。

 言葉で言ってくれないとわかんないよ。
 はあ、とため息をついた三千花の目に、黒猫が映った。

 一瞬、身構える。が、緑のような青いような目を見て、すぐにその正体を悟る。
 猫は彼女らの前でリーンウィックへと変化した。

「あら、リーンウィックさん。こんにちは」
 晴湖がにこやかに挨拶した。が、彼は答えない。

 すぐにエルンレッドも歩いて現れた。
「失礼します。こちらにいらっしゃるとうかがって」
 エルンレッドは礼儀正しく挨拶した。

「こんにちは」
 晴湖が笑顔で応じる。三千花は黙って頭を下げた。

「聖母様、ご無事で良かったです」
 エルンレッドと会うのは三千花の自宅で別れて以来だった。リーンとは夜中の博物館で別れて以来だ。

「聖母様におかれましては無事の聖母認定、謹んでお喜び申し上げます」
 続け様に言い、エルンレッドは恭しくお辞儀をした。
 喜べないんだけど、と思いながら三千花はお辞儀を返した。

「あなたも無事に帰ってこられてよかった。母が失礼をしなかった?」
「あなたのお母様はユニークで楽しかったですよ」
 エルンレッドがにっこり笑う。

 ユニークって、変だってことを隠すときによく使われるけど、本当に大丈夫だったのか。
 三千花は誤魔化すように笑顔を作った。

「リーンウィックさんも、無事で良かった」
 三千花が言うと、彼はそっぽをむいた。

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