聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「無事じゃない。僕は三千花と晴湖を恨む」
「こら」
 リーンウィックの言葉をエルンレッドが咎める。

「あんなこと言うから、僕は犬のボスになった。結果として、たくさんの犬を死なせてしまった。許さない……」
 三千花は目を見開いた。
 リーンは涙を浮かべ、うつむいた。

「ごめんなさい」
 三千花は謝った。
 あの争いで、敵の兵士たちも戦ってくれた犬たちも、多くが死んだ。

「人のせいにしてはダメよ」
 諭すように晴湖がリーンウィックに言った。

「最初は人から言われたことでも、あなたが決めたことでしょう?」
 リーンウィックはキッと晴湖を睨む。
「そうやって、人に責任をおしつけて!」

「王族は責任を負うものでしょう? 普通の人でさえ自分の行動には責任をとるものなのに。あなたはそれ以上に責任があるはずだわ」
「好きで王族に生まれたんじゃない!」

「そうね。だけど、責任がある。それを果たす前提があるから、あなたたちは一般人より贅沢な暮らしができるし、無条件で敬われるんだわ」
 晴湖は彼を抱きしめた。

「だからといって独りで抱え込む必要もないのよ」
 リーンウィックは黙る。美しい瞳から涙がこぼれる。
 それを隠すようにして、彼は晴湖の胸に顔を(うず)めた。

「ありがとう、私とアルウィード、刑事さんが(いま)生きていられるのはあなたのおかげだわ」
 三千花の言葉に、リーンウィックは返事をしなかった。

「少しあちらで休憩しましょ」
 晴湖は三千花とエルンレッドに目礼し、少し先にある四阿(あずまや)にリーンウィックを連れて行った。

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