聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「聖母様、気にしないでください」
 残されたエルンレッドは狼狽(うろた)えながら言った。

「大丈夫」
 三千花は微笑した。心が痛いが、エルンレッドを心配させたくない。

「どこまで自分の責任なのか、正直わからない。だけど、リーンウィックさんにそういうアドバイスをしたのは自分だから、その責任はあると思う」
 こんな結果になるとは思っていなかった。だが、そんな言い訳が通用するとも思えない。

「軍用犬だから、こういうことはあります。供養の慰霊碑もあります。気になるなら行ってみますか?」
「ぜひ」
 三千花の答えに、手配しておきます、とエルンレッドは答えた。


 * * *


 四阿のベンチに並んで座り、晴湖は静かに泣くリーンウィックの背中を撫でた。
「がんばったのね」
 晴湖の言葉に、リーンウィックはうなずく。

「偉いわ。一つ大人になったってことよ」
「大人になんてならなくてもいいんだ」
 リーンは晴湖を見上げる。

「僕は魔力があんまりないし、エルンレッドのようないい子でもないから、みんなに好かれてない」
「あら、自己評価がそんなに低いの。こんなに魅力的なのに」
 晴湖はリーンウィックをまっすぐ見る。彼の潤んだ瞳が彼女を見つめ返す。

「晴湖は僕のこと好き?」
「やあね、急に。好きよ」

「どういう意味で?」
「どういう意味かしらね?」
 いたずらっぽく晴湖は答える。

 リーンウィックはまた彼女の胸に顔を埋めた。
「僕のことからかってる」

「いいえ。王子様をからかうなんてとんでもない」
 晴湖は彼の頭を撫でた。

< 311 / 317 >

この作品をシェア

pagetop