聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 翌日、晴湖を見送るために三千花はエミュリーとともに神殿にいた。
 神殿の前方にはこの国の主神の像が置かれていた。

 三千花はまずその像に(ひざまず)いて頭をさげ、手を合わせた。
 三千花が来てからたくさんの命が失われた。三千花はその人たちへの追悼の祈りを捧げた。

 顔を上げると、主神の像が優しくこちらを見下ろし、手を差し伸べていた。
 像の背後にステンドグラスがあった。大きな円の中に幾何学模様の色とりどりのガラスがはめられており、光の柱ができている。

 彼女は厳かな気持ちになって主神を見つめる。
 像は何も語らない。
 光は三千花を柔らかく照らしている。
 彼女はただ黙って見上げていたが、やがて立ち上がった。

 主神の台座から少し離れたところに魔法陣が描かれ、神官たちが静かに最終確認を行っている。
 三千花たちは邪魔にならないところに立ち、そのときを待つ。

 この日、送還の儀式にはアルウィードも現れるはずだった。

 三千花は彼の母が注文したドレスを着ていた。
 アルウィードの瞳と同じ、青のような緑のような色のドレス。
 エミュリーは似合っているとほめてくれたが、三千花は自信がなかった。

 神殿にやってきた晴湖もまた、三千花のドレス姿をほめてくれた。
「きっと殿下も惚れ惚れするわね」
 晴湖はそう言う。

 だが、三千花は会いたいような会いたくないような複雑な気持ちでいた。

 あれ、とふいに気がついてしまう。
 そういえば自分はあちらに帰りたくてジタバタしていた。

 なんで見送る側になっているんだろう。

 そう思ったとき、神殿の扉が開いた。
 兵士が王子の入場を告げる。

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