聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「あの二人、ラブラブですね」
 いつのまに来たのか、ユレンディールが晴湖の隣にいた。
 彼もまた神官だ。先程まで準備にあたっていた。

「そうねえ、幸せそうでいいわね」
「私達も結婚しますか」

「ん?」
 唐突な申し出に、晴湖は困惑して微笑を向けた。ジョークにしてはセンスが悪い気がする。

「ん?」
 滑ったことを悟って、ユレンディールは微笑を返す。

 彼のその足に激痛が走る。
「痛っ」
 見ると黒猫がユレンディールの足首を噛んでいる。

「リーンか!?」
 ユレンディールの声に、黒猫は返事をしなかった。

 たたっと走って逃げて振り返り、座る。
「来てくれたの?」
 晴湖の問いに、黒猫は返事のようにしっぽをパタンと振った。

「ありがとう、見送りに来てくれて」
 晴湖はしゃがんで黒猫の目を見て声をかける。

 宝石のように美しい、緑のような青のような瞳。
 しばらく晴湖と見つめ合い、猫はまた背をむけて歩き出した。

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