聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「えっと、散歩とかしたいんですけど」
「しばらくは部屋から出ることはまかりなりません。御身の安全のためでございます」
「えー」

「ご自身の意図したところではないのでございましょうが、現在あなた様は重要人物として注目されています。下手に外を歩かれてはお命に関わる場合もございます」
 昨日までただの一般人だったのに、どうして急に命がどうこうと言われなくてはならないのか。

「お暇でしたら刺繍の道具でも本でも持ってこさせましょう」
 リグロットは優しく付け加えた。

「聖母様ってのが間違いだったと分かれば、解放してもらえるんですか?」
「……その可能性はあります」
「じゃあそれまで待つしかないか」
 三千花がつぶやくと、リグロットは苦笑した。

「聖母認定の方が確率が高いと思いますけどね」
「は?」
「最高神祇官(しんぎかん)である大神官長より魔力の大きい第二王子殿下の主張ですから、ひっくり返ることはまずないかと」

「そんなあ」
「焦らずご理解くださいませ。時間はございます」
 あなたたち基準でしかないじゃん、とは言えなかった。無断欠勤は何日続いたら首かな、と頭をよぎった。

「侍女。聖母様はこちらの世界のことをよくご存知ではない。それを踏まえてよくお仕えするように」
「……はい」
 エミュリーが渋々返事をした。


< 40 / 317 >

この作品をシェア

pagetop