聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「やはりあなたが聖母様でいらっしゃいましたか。なぜこんなところに? お部屋にいらっしゃるとうかがっておりました」
「なんていうか……」
 はぐれて道に迷った、とは言いづらかった。

「お迷いになったのならお送りしましょう」
 察した彼が先回りして言う。
「お願いします」
 三千花は素直に頼んだ。
 彼はにっこり笑った。






 彼は歩きながら簡単に自己紹介をしてくれた。
 ユレンディールは現国王の弟の息子、つまりは第二王子のアルウィードの従兄弟だと言った。二五歳と聞いて、三千花は親近感を覚えた。

 彼は普段は神官として神殿に勤めているという。だが、三千花のイメージする神官とはまったく違った。服のせいだろうか。普通に王子様と言われたほうが納得できる。
 

「こちらには慣れそうですか?」
「まったく無理です」
 即答した。ユレンディールは少し眉を上げた。

「なぜ?」
「……いろいろ違いすぎて」

「たとえばどんな?」
「王子様とか貴族とか」
「あなたの世界にはいなかったのですか?」

 なんと答えていいやら、と思っていると、
「その様子では近くにはいなさそうですね」
 と言われた。
「そうね。私の国では、かなり昔に貴族制度は廃止されたから。身近な存在じゃないなあ」

「なにか疑問があればお答えしますよ」
「ありすぎて」
 三千花は何を聞いたらいいのかわからない。

 そういえばろくにアルウィードのことも知らないな、と三千花はため息をついた。
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