聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜




 エルンレッドはたまたま遭遇しただけだった。
 会って謝罪ができて良かった、と言って彼は立ち去った。

 ユレンディールに連れられて部屋に戻ると、リグロットがいた。エミュリーがしょげている。

「聖母様、ご無事で!」
 リグロットが慌てた様子で出迎えた。

「迷子になってたよ」
 ユレンディールが言うと、リグロットは深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」

「じゃあね、聖母様。また会いましょう」
 ユレンディールは三千花の手をとり、その甲にキスをした。
 あまりに自然な動きだったので、されるがままだった。
 にこやかにユレンディールは去っていった。

「心配いたしました」
 リグロットがホッとした様子で三千花に言う。
「どうしたの?」
 彼女はバレないように気をつけながら手の甲をドレスで拭う。

「あなたが勝手に部屋を出ていってしまったと報告がありました」
「勝手ではないです」
 ムッとしてエミュリーを見る。が、うつむいていて表情が見えない。

「ではエミュリーが嘘をついていると」
 そういうことになるのだが、それをはっきり言うのは抵抗があった。しかし。

「嘘ではありません。本当です。私はお止めしたのです」
 エミュリーがリグロットに訴える。

 三千花はさらにムカッと来た。悪者にされる言われはない。迷子になったのは彼女が自分をまいたからだと悟った。

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