聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 自分でも悪い癖だとわかっている。目の前で起きていることに対して、すぐ情に流されてしまう。
 リグロットはしばらく三千花とエミュリーを見て考えたあと、言った。

「こちらの不手際のせいもありましたから、三千花様がそうおっしゃるのなら。でも一度だけですよ」
 警備兵は侵入者にばかり気を使い、出て行く者に対しては警戒していなかったのだ。初歩的なミスだ。

「ありがとうございます」
 泣きそうな顔でリグロットに(・・・・・・)お礼を述べるエミュリー。
 リグロットは次はない、と厳重に言って出ていった。

 直後、
「ありがとうございます、せ・い・ぼ・さ・ま!」
 エミュリーが三千花を睨む。

 は? と思ったところに
「いい人ぶって!」
 と追い打ちをかけるように言う。

「私、夕食の指示をしてまいります」
 反論する間もなく、そう言って出ていった。
「えー……」
 三千花の心に虚しさが広がった。


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