聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「あ、あの、なんかダメみたい。ごめんなさい」
 三千花は素直に謝った。

「聖母様は、こんなふうに人を侮辱なさるのですか」
「誤解です、お互いに気楽にお茶したいな、と思って……」

 助けを求めてエミュリーとリグロットを見るが、二人とも動かない。エミュリーは黙って首をふるだけで、リグロットは目を合わそうともしなかった。心なしか笑いをこらえているように見える。

 冷たい奴らめ!
 ファリエルタはよよよと泣き崩れる態勢になっており、ハンカチを目に当てていた。

「ご、ごめんなさい。私こちらのルールに(うと)くて」
 教えられたことをガン無視して奥の手を使ったのは棚上げだ。席を立ち、ファリエルタの横に膝をついて彼女の様子を窺う。

「あなたが来なければ私が婚約者だったのに!」
 ファリエルタはキッと三千花を睨む。その目は濡れていない。

 嘘泣き!?
 三千花は引いた。

「なんであなたなんかが聖母なの!」
 この発言にはリグロットが割り込んでくるはず!

 振り返るが、彼は笑いを噛み殺して成り行きを見守っている。

 なんで今日は何もしないんだ!
 三千花は内心で文句を言う。そもそも自分は被害者のはずだ。責任を転嫁することに決めた。

「えーっと、文句はあの王子に言ってもらわないと」
「アルウィード様を略称で呼ぶなんて!」
 あのとアルを聞き違えたファリエルタは憤慨した。

 あー、めんどくさ。
 ただでさえコルセットで呼吸が苦しくて頭が回らないのに、これ以上何をどうしろと。

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