内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
目が合ったのでぺこりと会釈をすると、切れ長の目を細めてふっと微笑んだ彼が近づいてくる。
え……なんで? 私、なにかした?
「羽澄さん、お待ちしていました」
「な、なにかご用でしょうか?」
別世界の人としか思えない専務と話すのはどうしても緊張して、声が裏返りそうになる。
しかし専務は私の言葉には応えず、すぐ隣に立つ霜村くんに視線を移した。
「今から彼女をお借りしても?」
「えっ? いや、はい、俺に許可を取ることじゃないというか……」
専務を前にするとさすがの霜村くんでも緊張するようで、しどろもどろになる。
それにしても、私を借りるってどういうこと?
「それでは行きましょう、羽澄さん」
「あの、どちらへ?」
一方的に話を進めて歩きだそうとする専務を慌てて呼び止める。
「古い商家をリノベーションした割烹料理の店です。食事をしながら今後の面談をしましょう。あなたには期待しているんです」
「しょ、承知しました」
研修が終わってすっかり油断していたところに〝今後の面談〟と言われて、慌てて緩んでいた気持ちを引き締める。
異動は来年度からという話だったけれど、今から準備しておくこともあるのだろう。それか、専務じきじきに経営のイロハを教えてくれるのかもしれない。
専務の後を追いつつ霜村くんの方を振り返って手を振ると、彼は口パクで〝頑張れよ〟と言い、小さなガッツポーズを作って送り出してくれた。