内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
貸し会議室の入ったビルを出たのは午後五時過ぎ。日の暮れかけた空は燃えるような茜色をしていた。専務が手配したのであろうタクシーが、ビルの前で待機している。
「お先にどうぞ」
「いえ、専務から……!」
ドアの開いた後部座席に先に座るよう勧められ、慌てて手のひらと首を振る。
私が上座に座るなんてめっそうもない。
「いいから」
専務はそう言って私の背中に手を添えると、少し強引に車内へと促す。
上司の指示なら仕方がないか……。
言われるがまま運転席の後ろ側に座ると、専務も隣に腰を下ろした。ふわっと鼻先をかすめた、男性的なフレグランスの香りにどぎまぎする。
タクシーが動き出した直後、専務がネクタイを軽く緩める仕草をして小さく息をついた。
「疲れた……。猫をかぶるのをやめてもいいか?」
「えっ? はい……」
突然ぞんざいな口調になった彼に、ぱちぱち目を瞬かせた。専務の横顔は相変わらず美しいけれど、纏っている雰囲気がどことなくさっきまでと違う。