内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
柘榴酒がほんのりと体を温めてくれたおかげか、少し滑らかに口から言葉が出てくるようになった。商品にまつわる思い出を語ると、専務が意外そうに目を見開く。
「本当か? きみは渋い趣味をしているな。あの商品はもう少し高い年齢層をターゲットにしているはずだが」
「そうかもしれません。普段着る服も持ち物も、地味な色の方が好きなので……そういえば今日のスーツも、煤竹色って感じですね」
自分の服装を見下ろし、自虐的に笑う。
同じ茶系の色でも、小峰さんが着ていたような明るいトーンのものより、どうしても暗めの色を好んで身に着けてしまう。目立ちたくないという深層心理が現れているのかもしれない。
「だったら俺のスーツは、鉄紺といったところか」
「そうですね……茄子紺にも見えます」
「それはいい。茄子は好物だ」
専務はそう言って、前菜の皿に並んだ茄子の田楽を口に運んだ。
茄子が好きだなんて庶民的な感覚が意外だな。そう思いながら、私も同じものを口にする。味噌に乗った木の芽の爽やかな香りが鼻から抜けた後、やわらかい茄子と味噌とが口の中で溶け合う。
その美味しさに、思わず頬が緩んだ。