旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「このくらいで動揺してどうすんのよ……」
「初心者だから無理……」
「はあー、まあいいや。旦那からそういうの全然感じないの?」
「うん。なんか無欲っていうかさ、名前に負けず劣らずで、私には聡一さんがもう仏様に見えるんだよね」
「あはっ、仏様って」

 千佳は笑っているが、美咲は真剣にそう思っているのだ。あの慈愛に満ちたオーラは普通の人間に出せるものじゃない。人間を超越した存在にしか見えなくなってくる。

「笑い事じゃないから。聡一さんの前にいると自分がすごく欲深い人間に思えてきて、彼の前にいるのが恐れ多い気すらしてくるんだって」
「人間なんだから、欲があって当然でしょ。旦那だって子供の話したくらいなんだから欲はあるって」
「そうかなー?」

 彼に欲があるだなんて賛同しづらい。子供だって彼と一緒にいたら、それこそコウノトリが運んできそうな気さえする。美咲は彼に欲があるなんて納得いかないという顔をしていたが、千佳はそれを全然気にしているようではなかった。
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