旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「映画、面白かったですか?」

 劇場内から出ると聡一が問いかけてきた。

「はい、とても。泣いちゃうくらいですから」
「美咲さんが楽しめたのならよかったです。私もあなたのおかげで感動を味わえました。実はね、原作の小説を読んだことがあるんですよ。でも、映像で観るとまた違った感動がありますね」
「そうだったんですね。原作も面白かったですか?」
「はい。心理描写が素晴らしくて、とても胸に刺さる作品でした。自宅にありますから、美咲さんもお読みになりますか?」

 当たり前のように提案してくれるのが嬉しい。

「いいんですか?」
「もちろんです」
「じゃあ、お願いします」
「はい。ふふ。こうして何かを一緒に楽しむのはとても嬉しいものですね」
「はい……私も嬉しいです」
「ふふ、美咲さんは本当にかわいい」

 美咲は折角冷ました顔をまた火照らせてしまった。聡一は息をするようにこういうことを口にするから困る。美咲が照れる一方で、聡一は平然としているのがまたなんとも悔しい。ちょっとだけ恨みがましい目を向けてみるが、聡一はいつも通りの微笑みを向けるばかりだ。
< 28 / 177 >

この作品をシェア

pagetop