極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 車内がしんと静まりかえっていて、居心地が悪い。
 二葉が小さく身じろぎをしたとき、奏斗が口を開いた。
「さっき病院にいたけど、二葉、君は――」
 詳しいことを訊かれる前にと、二葉はわざと話題を逸らす。
「あ、はい、病院にいましたよ。奏斗さんのお姉さんもいらっしゃいましたよね。お姉さんの予定日はいつですか?」
「……詳しい日付は覚えてないけど、九月上旬だと聞いた」
「そうなんですね。楽しみですね」
「そうだな。両親は初孫だから、とても楽しみなようだ」
 また話題が途切れそうになり、二葉は急いで口を動かす。
「あの、お姉さんの赤ちゃん、性別はもうわかったんですか?」
「男の子だって言っていた」
「男の子のベビー服、きっとかわいいでしょうね。あ、ベビー服なら女の子のでもかわいいか」
 無理やり話題を作ろうとしているせいで、自分でもあまり意味のない話をしていることがわかる。
 それでも自分のことを訊かれたくなくて中身のないことを言い続けているうちに、目印のコンビニが左前方に見えてきた。
「あのコンビニの先にある白い壁のマンションです」
「わかった」
 奏斗はその七階建てマンションの前で左折して、ゆっくりと敷地に入り、来客用の駐車スペースに停車した。
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