極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「はい」
『大槻です』
「あ、はい」
『イギリスのお土産を持ってきたんだ』
「お土産、ですか?」
 二葉は怪訝な声を出した。
『ああ。君にと思って買ったから、ぜひ受け取ってほしい』
「でも、もらう理由が……」
『俺には手元に置いておく理由がないんだ』
 奏斗の言葉を聞いて、二葉は胸がズキンと痛んだ。
 二葉のことを思い出すような品物を、そばに置いておきたくないという意味だろう。
 二葉は震えそうになる声をどうにか抑えて応答する。
「わかりました」
 オートロックの解除ボタンを押すと、モニタから奏斗の姿が消えた。二葉は洗面所に行って鏡を見た。誰にも会うつもりはなかったので、髪は後ろで緩くまとめているだけだし、メイクもしていない。
 リップクリームを塗って、パジャマ代わりに着ているルームワンピースの上からカーディガンを羽織ったとき、玄関のインターホンが鳴った。
 玄関に行ってドアスコープを覗くと、奏斗の姿が見える。
 二葉はチェーンを外してドアを開けた。
「こんにちは」
 白のVネックシャツにネイビーのテーラードジャケット、カーキのパンツという格好の奏斗が、ぎこちなく微笑んだ。
「あ、こんにちは」
 二葉は軽く頭を下げた。奏斗は左手にコティリードンのエコバッグ――ロンドンで二葉にくれたのと同じもの――と紙袋を持っていたが、そのうちの紙袋を右手で持ち上げた。
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