極秘の懐妊なのに、クールな敏腕ＣＥＯは激愛本能で絡めとる

「ご挨拶させてもらうよ」
「あ、はい」
　奏斗はローチェストに近づくと、写真に向かって手を合わせた。心の中でなにか声をかけてくれているのか、目を閉じてしばらくじっとしている。
　奏斗が目を開けて手を下ろしたタイミングで、二葉は彼に声をかけた。
「ありがとうございます。あの、ミルクと砂糖はどうされますか？」
「ブラックでいいよ、ありがとう」
　二葉は戸棚に残っていたドリップバッグで奏斗のためにコーヒーを淹れ、自分の分はマグカップにルイボスティーのティーバッグを入れて湯を注いだ。
「お待たせしました」
　二葉はローテーブルの奏斗の前にコーヒーを置き、一人掛けのソファの前にルイボスティーを置いた。
「あ」
　食べかけのゼリーのカップが置きっぱなしなのに気づいて、慌ててそれをキッチンに運ぶ。
　二葉がソファに座ると、奏斗は「ありがとう。いただきます」と言って、コーヒーカップを持ち上げた。一口飲んで二葉を見る。
「イギリスで本をたくさん買ってたけど、何冊か読んだの？」
「実はまだ三冊だけです。一冊のレジュメを書いてたので」
　二葉は出版社に持ち込みをするためのレジュメについて説明した。
「なるほど。じゃあ、今はそのレジュメの返事待ちってことか」