極秘の懐妊なのに、クールな敏腕ＣＥＯは激愛本能で絡めとる

　奏斗は空になったコーヒーカップをローテーブルに置いて、何気ない調子で二葉に問う。
「昼食は食べた？」
「え？　あ、えっと」
　ゼリーが昼食だったと言うわけにはいかず、二葉は小声で「まだです……」と答えた。
　奏斗はソファの横に置いていたエコバッグを視線で示して言う。
「実はそうめんをもらいすぎて、お裾分けで持ってきたんだ。茹でてあげるから一緒に食べよう。キッチン借りるよ」
　奏斗が立ち上がろうとするので、二葉は驚きながら答える。
「えっ、でも、私、あまり食欲がなくて」
「できあがったものを見て、食べたくなったら食べてくれたらいい。それに、俺が空腹のまま帰りたくないんだ」
　奏斗が珍しく強気な口調で言った。そんなふうに言われたら、絵をもらった二葉としては断りにくい。
「……わかりました。どうぞ」
「ありがとう」
　奏斗はジャケットを脱いでソファの背にかけ、エコバッグを持ってキッチンに向かった。
　二葉は彼のあとに続いてキッチンに行き、鍋と調味料の場所を説明した。
　奏斗は鍋を取り出して二葉を見る。
「二葉はゆっくりしてて」
「そうさせてもらいます」
　二葉は素直にソファに戻った。一人掛けのソファにゆったり深く座って体を休める。
　眠くてだるくて体が重くて……本を読もうとしてもなかなか集中できない。ずっとこんな状態が続いたら、どうすればいいんだろう。