極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 本当に迎えに来てくれるのか、怪しすぎる。
 二葉がベッドルームに戻ると、奏斗はスーツを着たまま眠っていた。ネクタイも功成が緩めたときのままだ。
(スーツ、しわになっちゃいそう……)
 けれど、穏やかな寝息を立てているので、起こすのは忍びない。
 二葉はそーっと手を伸ばして慎重に奏斗のネクタイを解いた。ジャケットのボタンを外したとき、いきなり奏斗の手が動いて、二葉の手首をギュッと握った。
「きゃあっ」
 突然のことに驚いて二葉は悲鳴を上げた。
「……二葉?」
 奏斗はゆっくりと瞬きをして、彼女の手を離した。ベッドに起き上がって、前髪をくしゃくしゃと乱す。
「二葉がどうしてここに?」
「どうしてって……ここは私の部屋ですから」
「えっ」
 奏斗は部屋を見回して、自分の部屋ではないことに気づいたようだ。右手を口元に当てて、うめくように言う。
「なんでこんなことに……」
「それは私の方が知りたいです」
「功成は?」
「『これから顧客の一人と会わなきゃいけない』って言って、帰っていきました」
「あいつ……」
 奏斗は座ったままため息をついた。
「お水飲みますか?」
「ああ……頼む」
「少し待っててください」
 二葉はキッチンに行き、氷と水を入れたグラスを持ってベッドルームに戻った。
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