極秘の懐妊なのに、クールな敏腕ＣＥＯは激愛本能で絡めとる

「おはようございます。いつもよりよさそうです」
「よかった。朝食を作ったんだが、食べられそうかな？」
（奏斗さんが朝食を作ってくれたなんて！）
「ありがとうございます！」
　二葉はベッドから飛び降りたい衝動に駆られたが、気持ちを落ち着かせてゆっくりと下りた。そして、部屋のドアを十センチほど開ける。
「どうした？」
　ドアから目だけ覗かせた二葉を見て、奏斗は不思議そうな声を出した。
「あ、や、寝起きのすっぴんだから、ちょっと恥ずかしくて」
　二葉の言葉を聞いて、奏斗はふっと笑みを零した。
「なんですか？」
「いや、かわいいなと思って」
「ええっ」
　二葉が驚いて声を上げると、奏斗は小さく咳払いをして背を向けた。
「俺はもう仕事に行くから、すっぴんとか気にしなくても大丈夫だ。昼食も用意しておいたし、好きなときに食べてくれ。それじゃ、また夜に。二葉は仕事、無理するなよ」
　奏斗は一気に言って玄関に向かった。二葉は一瞬迷ったが、ドアを大きく開けた。
「奏斗さん、行ってらっしゃい！」
「行ってきます」
　奏斗は振り返らずに右手を振って、外に出た。玄関ドアがパタンと閉まり、家の中がしんとする。
（行ってきますのキスをしてほしかったのに……）