極秘の懐妊なのに、クールな敏腕ＣＥＯは激愛本能で絡めとる

　二葉が見上げると、彼は少し戸惑ったような表情をしたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「なにがあったの？」
「実は！　ついに！　小説の翻訳を依頼されたんですっ」
「ほんとに？」
「はい！」
「それはすごいな！」
　奏斗はビジネスバッグをシューズロッカーの上に置いて、二葉を両手で抱き上げた。
「ついに夢が叶ったのか。おめでとう！」
「ありがとうございます！　でも、依頼されただけで満足しちゃダメです。しっかりいい翻訳をして、また依頼してもらえるようにがんばらないと！」
　奏斗は二葉を下ろして、彼女の額に自分の額を軽く合わせた。
「二葉のそういう向上心のあるところ、好きだよ」
「〝ちょっと違う〟って思わなかった？」
「思うわけない。最初から気づいてた」
　二葉は嬉しくなって背伸びをして、彼の唇にチュッとキスをした。その瞬間、奏斗がハッとしたように目を見開く。
「奏斗さん？」
「あ、いや。お腹空いたな、と思ったんだ。煮込みハンバーグを作ってくれたんだったな。早く食べたい」
　奏斗は靴を脱いで廊下に上がった。彼に続いて廊下を歩きながら、二葉は言う。
「じゃあ、温め直しますね」
「二葉は食べてなかったのか？」
　奏斗が肩越しに二葉を見て、驚いたように言った。