極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉は目を丸くして奏斗を見た。奏斗は二葉の左手を取って、薬指に指輪をはめる。ひんやりとしたそのリングは、そこにあるのが当然というように、二葉の指にぴったりと収まった。
「このままずっと外さないでほしいな」
 奏斗に甘い笑みを向けられて、二葉の心臓がドキンと跳ねた。
 そのとき、会計から二葉の名前が呼ばれる。
「栗本さん、栗本二葉さん」
「あ、奏斗さん、お会計してくるね」
 二葉は頬を赤くしながらカウンターに向かった。会計を済ませて次回の予約をしてから、左手の薬指を見る。
 天井の照明を浴びて、大粒のダイヤモンドが艶やかに美しく輝いた。
(この指輪って……)
 二葉が顔を上げたとき、奏斗がすぐ横に立っていた。
「行こう」
「あ、うん」
 出口へと向かいながら外待合室を見たら、圭太郎が二人の妊婦にぺこぺこ頭を下げながら席を譲っていた。妻の方はうっとりした表情で奏斗を見ていたが、二葉と視線が合った瞬間、おもしろくなさそうな顔になってパッと目を逸らした。
(まさか同じ病院だったなんて……)
 二葉は小さく息を吐いた。
「疲れた?」
 自動ドアを出てから奏斗が訊いた。
「あ、ううん。ちょっとびっくりしちゃって。世間は意外と狭いんだなって」
「そうかもしれないな」
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