極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 駐車場に着いて、奏斗が助手席のドアを開けた。
「ありがとう」
 二葉は礼を言って乗り込んだ。運転席に回った奏斗が、席に座ってすぐ二葉に謝罪の言葉を述べる。
「すまない」
「えっ、なにを謝ってるの?」
 二葉は驚いて言った。
「本当はもっとロマンチックなシチュエーションで渡そうと思っていたのに。あいつの言い種が我慢できなくて、こんな状況で渡してしまった」
 奏斗は右手で前髪をくしゃりと握った。その表情はとても悔しそうだ。
 二葉はくすぐったい気持ちで口元をほころばせる。
「大丈夫だよ。正直、スカッとしたし、嬉しかった」
「嬉しかったのはスカッとしたから?」
 奏斗の口調が拗ねたものに変わり、二葉はクスクス笑った。
「奏斗さんの言葉が嬉しかったからに決まってるでしょ。ずっと外さないでほしいって言ってくれて、嬉しかったの」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
 奏斗は右手を伸ばして二葉の左手を取った。そのまま手を持ち上げて、二葉の手の甲にキスをする。
「結婚式はいつ挙げようか?」
 奏斗に訊かれて、二葉は考えながら答える。
「んー……私は挙げなくてもいいかなと思うんだ」
「憧れとかないのか?」
 奏斗が驚いたように言った。二葉は寂しさを覚えながら答える。
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