極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 安定期に入ったのでしっかり仕事をしたいと思っていたのだが、日中は毎日、思っていたよりも大きな工事音がするので、仕事に集中できない。それに、イライラして赤ちゃんに悪い影響が出るのでは……と不安に思っていたら、奏斗の方から引っ越しを提案してくれた。
『ご両親の思い出のある家だから離れがたいと思うけど、工事が終わるまで俺のマンションに来ないか?』
 そんなわけで、二葉は土曜日の夜、奏斗の車に乗って彼の部屋に向かっている。
 必要な荷物は日中、引っ越し業者が運んでくれたので、二葉は仕事で使っているパソコン、それに少しの資料と本だけを段ボール箱に入れて後部座席に載せた。
「あのマンションだよ」
 奏斗は堂島川に近く、公園を見下ろす高層マンションの敷地に車を入れた。駐車場で車を降りて、二葉はマンションを見上げた。暗い夜空を背景に、明かりの灯った部屋がずっと上まで続いている。
「奏斗さんの部屋は二十階って言ってたけど、マンションは何階建てなの?」
「三十階」
 奏斗は後部座席から段ボール箱を取り出して返事をした。
「どうりで上の方が見えないわけね」
 二葉が見上げていたら、奏斗が右手で段ボール箱を抱え、左手を二葉の腰に回した。
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