極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 義理の両親になる人に会うのだから、畏まりすぎず、けれどほどよくきちんと見えるよう、二葉はライトブルーのブラウスにネイビーのフレアスカートを合わせた。奏斗は白いシャツにネイビーのテーラードジャケット、ベージュのスリムパンツという格好だ。
 大槻ホールディングスの歴史は明治時代に遡る。大阪の貧しい家庭出身の大工が一旗揚げようと東京に出て、大槻組という名前で創業した。初代は大工の腕だけでなく、時代の流れを読む才能にも長けていて、事業を広げて鉄道やトンネルの建設に従事し、日本屈指の有名企業に育て上げた。大正時代に三代目が社長になったとき、初代の遺言に従って、初代の出身地である大阪に本社が移されたのだ。
 そんなわけで、奏斗の両親の家は、一族の出身地である大阪府郊外の市の閑静な住宅街にあった。車庫のシャッターが自動で開き、高い塀で囲まれた広い敷地に奏斗が車を乗り入れる。車から降りた二葉は、由緒正しい日本家屋といった佇まいの家――というより屋敷――を見て、緊張した面持ちで口を開いた。
「ものすごく大きなお家なのね……」
「住んでいるのは両親だけだから、広すぎるんだけどね。専属の家政婦さんだけじゃ手が回らないから、掃除は昔から専門の業者に週に一度来てもらっている」
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