極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「奏斗坊ちゃま、お帰りなさいませ」
 女性は人懐っこそうな笑みを浮かべて奏斗に言った。彼女が大槻邸専属の家政婦なのだろう。
 奏斗は気恥ずかしそうな顔を、眉を寄せてごまかす。
佳乃(よしの)さん、もう坊ちゃまはやめてくれ」
 佳乃と呼ばれたその女性は、「ふふっ」と微笑んで言う。
「坊ちゃまがお小さい頃から見てきましたからね。おいくつになられても、坊ちゃまは坊ちゃまです」
 奏斗は小さく咳払いをして二葉を見た。
「二葉、こちらは俺が子どもの頃からずっと大槻の家に来てくれている藤木(ふじき)佳乃さん。佳乃さん、彼女は俺の婚約者の栗本二葉さん」
「栗本と申します。よろしくお願いいたします」
 二葉は深々とお辞儀をした。
「そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ。遠いところお疲れさまでしたね。中へどうぞ」
 佳乃が格子戸を開けてくれたので、二葉は奏斗に続いて家の中に入った。玄関は二葉の家の玄関が四つくらい収まりそうな広さだ。
 二葉たちが廊下に出されていたスリッパに足を入れたとき、玄関ドアを閉めた佳乃が言った。
「今日は奈美お嬢様とご主人の正輝(まさき)様がいらしてますよ」
「……義兄(にい)さんが?」
 奏斗は低い声で言って佳乃を振り返った。
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