極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる

ロンドンで出会ったクールな紳士

「あ……っと」
 栗本(くりもと)二葉(ふたば)はバランスを崩しそうになって、どうにか体勢を立て直した。
 書店で買ったばかりのペーパーバック十五冊を入れた紙袋を左腕に掛けたまま、カフェのカウンターで注文の品がのったトレイを受け取ったのだが……ティーポットとティーカップ、チョコレートショートブレッドののったトレイは予想よりも重たかった。
 紙袋とのバランスを取るのが難しい。
(明日イギリスを発つわけでもないのに、十五冊はいくらなんでも買いすぎだったかな)
 フリーランスの翻訳者として働く二葉は、仕事をする場所に縛られることはない。ここロンドンに滞在して、三日後でちょうど一ヵ月になるが、イギリスにはあと三ヵ月いる予定なのだ。
 二葉は苦笑を浮かべつつテーブル席の間を縫って、窓に面したカウンター席にトレイを置いた。窓の向こうには、石畳の歩道を挟んで、店構えにも年季を感じさせるアンティークショップがある。
 ここはバッキンガム宮殿から少し離れた静かな通りにあるカフェだ。チェーン店ながら、落ち着いた調度品とゆったりした店内は居心地がいい。一週間前に見つけて以来、ほぼ毎日訪れている。
< 3 / 204 >

この作品をシェア

pagetop