極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉の言葉を聞いて、奏斗は小さく笑い声を立てる。
「おっと、二葉さんのイメージを壊さないように、これ以上の本性は隠しておかなければ」
 奏斗のおどけた表情を見て、二葉もつい「ふふっ」と笑った。久しぶりに声を出して笑った、と思いながら。

 おいしいスイーツと紅茶を挟んでの会話はとても弾んだ。
 二葉がこれからまだ三ヵ月イギリスに滞在すると知って、奏斗は羨ましそうに言う。
「二葉さんはイギリスの初夏を味わえるんですね。イギリスの夏は過ごしやすいんだろうなぁ」
「日照時間が長いので、夜九時くらいになってもまだ明るいそうですよ」
「うわ、いいなぁ。遊びたい放題だ。おっと、これも紳士らしからぬ発言だったかな?」
 奏斗が冗談っぽく笑い、つられて二葉も笑った。
(大槻さんと一緒にいると本当に楽しい)
 ひとしきり笑って明るい声が消えると、テーブルがしんとした。
 楽しい時間はあっという間に過ぎる。ティースタンドの皿もティーポットも、ずいぶん前に空になってしまっていた。
 そろそろカフェを出なければいけないだろう。いつまでも彼を引き留めていてはいけない。
 だけど、もう少し彼と話していたい。
 そんな気持ちが心の中でせめぎ合う。
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