極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
(思い切って……ディナーに誘ってみようかな。でも、今食べたばっかりだから、断られるかも……)
 名残惜しい気持ちで、ためらいがちに奏斗を見た。奏斗は窓の方に顔を向けていたが、二葉の視線に気づいて彼女の方を見た。目が合って、彼はふわりと微笑む。
「このあと、ハイド・パークを散策しながらもう少し話をしませんか?」
 奏斗の言葉を聞いて、二葉は顔がほころぶのを止められなかった。
「はい! ぜひ!」
「それじゃ、行きましょうか」
 奏斗が店員に合図をして、テーブルで会計を済ませた。
 カフェを出て通りを渡れば、すぐ前がハイド・パークだ。広大な公園に一歩足を踏み入れた瞬間、澄んだ空気に深呼吸がしたくなる。
「私、近くの博物館や宮殿は見学したんですけど、ハイド・パークをゆっくり散策したことはなかったんです」
 二葉の嬉しそうな声を聞いて、隣を歩く奏斗が目を細めた。
「それはよかった。俺も一人で早朝に散歩しただけなので、とても楽しみです」
 彼のスマートな気遣いに、二葉はつい足取りが軽くなる。
 芝生は青々としていて、枝を広げた大きな木がずっと奥まで続いていた。遊歩道のそばには黄色や白、紫の小さな花が咲いている。
「わぁ、ステキ」
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