極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「あっ! なにか食べてる!」
 二葉は思わず声を上げた。それに驚いたのか、リスはぴょんと跳ねて姿を消した。
「あー」
 二葉は慌てて両手で口を押さえたが、後の祭りだ。
「私のせいで逃げちゃいました。すみませ――」
 ん、と言いながら右側を見た二葉は、すぐそばに奏斗の顔があって、心臓がさっきよりも大きく跳ねた。
「あ、ごめん、なさい」
「いや、こちらこそ」
 そう言いながらも、彼の手は二葉の肩から離れない。
 目の前の思慮深そうな茶色の瞳に、二葉の顔が映っていた。心を探るようにまっすぐに見つめられ、戸惑いながらも目を逸らせない。
「お、大槻さん?」
「奏斗、と呼んでほしい」
 そうすることで彼はなにを求めているのか。
 大人の女性としてわかるような気もするけれど……圭太郎にあっさり捨てられた過去を思えば、どうしても自信が持てない。
 二葉がなにも答えられずにいたら、奏斗は右手で二葉の左手を軽く握った。
「ダメかな?」
 奏斗は二葉の手を持ち上げてキュッと握った。その瞬間、息が止まりそうになる。
「俺は欲しいものはどうしたって手に入れたいと思う欲張りな男なんだ。今俺は、どうしても君を手に入れたい」
 奏斗の低くかすれた声が耳元で言い、二葉は頬を赤くしながらうつむいた。
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