極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「今日は……たくさんお話できて楽しかったです」
 本当はこの時間を終わらせたくない、彼ともっと一緒にいたいと思っていた。だから、このまま流されたい気持ちもある。
(けれど、彼が望んでいるのが旅先での一夜限りの恋だとしたら……?)
 体を重ねてしまったら、きっと彼の心が欲しくなる。彼に自分の心を預けたくなる。
 そんなふうに想いが深まるとわかっているのに、すぐに終わってしまう関係を始める勇気はない。
 二葉は思い切って顔を上げた。
「でも、私、一夜だけで恋を終わらせられるほど、器用な女じゃないんです」
 目が合って、奏斗が大きく息を吐き出した。安心したようにふわっと微笑んで、二葉の額に彼の額をコツンと当てる。
「本当は俺のことなんて好きじゃないって言われるのかと思った」
「えっ」
 二葉は思わず目を見開いた。奏斗は不満そうな口調で言う。
「俺だってそんなに器用じゃない」
「ほんとですか?」
「疑ってるの?」
「いえ、そういうわけじゃ。でも、私、奏斗さんのことは名前と会社しか知らないですし」
「これから知ってくれればいい」
 これから。
 未来を思わせる言葉に、二葉の胸がドキンと鳴った。
「二葉のこと、もっと教えて」
 奏斗は二葉の指先に軽く口づけた。その表情はロンドンの夕暮れのせいか、今までとは雰囲気が違って見える。
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