極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる

手の届かない人

 規則的な振動音が聞こえてきて、ベッドで寝ていた二葉はぼんやりと目を開けた。
 奏斗と別れた翌日にバースへ行き、それからいくつか都市を巡った。今は蜂蜜色の石造りの家々が並ぶコッツウォルズ地方の村に、一週間滞在している。
 カーテンの外はまだ暗い。
 二葉は目をこすりながらヘッドボードに手を伸ばした。そこに置いて充電していたスマホのライトが点滅している。
(今何時?)
 画面を見たら、午前四時十分という時刻表示の下に、知らない日本の携帯番号が表示されていた。
(こんな時間にいったい誰……?)
 応答しようか迷う。
 イギリスでは早朝だが、日本では午後のはずだ。セールスや迷惑電話かな、と思いかけて、ハッとなった。
(もしかしたら、出版社の担当の方かも!)
 二週間前、ロンドンで買った恋愛ファンタジー小説のレジュメを作成して、日本の大手出版社に送付した。その返事かもしれない!
 二葉は跳び起きるやいなや通話ボタンをタップした。
「もしもし、栗本ですっ」
『あの、栗本二葉さんでしょうか?』
 聞こえてきたのは、五十代ぐらいの女性のためらいがちな声だった。
「はい、栗本二葉は私です!」
『私、栗本洋一郎(よういちろう)さんご夫婦の近所に住む古谷(ふるたに)という者です』
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