極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「二葉、来たのか」
 祖父は自分でリモコンを操作して、ベッドの背もたれを少し起こした。救急車で搬送されて手術を受けたとは思えないほど、しっかりしている。
 そのことに安堵しながら、二葉はフルーツゼリーの箱をベッドの横のテレビ台に置いた。
「はい。あの、これ、お見舞いです」
「わざわざすまんな」
 フルーツゼリーを買ってきたことか、イギリスから戻ってお見舞いに来たことか、あるいはその両方か。どれに対する詫びの言葉かわからなかったが、二葉は「いいえ」と返事をした。
「二葉は今いくつになった?」
「十月の誕生日が来たら二十九歳になります」
「そうか、もうそんな年か」
 祖父はしみじみとした口調で言った。
 両親の葬儀で会ってから一年しか経っていないが、それまでほとんど会ったことがなかったのだ。祖父が二葉の年齢を知らなくても仕方がないのかもしれない。
 それでも、少し寂しい。
 祖父は少し考えるように目を伏せてから、二葉を見た。
「結婚はしていないのか?」
「あ……はい、してません」
「いい相手はおらんのか?」
 その問いにはどう答えようか迷う。
 奏斗とのことを相談したいと思っていたが、それは祖父ではなく祖母にだ。
 二葉がなにも言えずに黙っていたら、祖父の眉間の皺が深くなった。
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