極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
「ばあさんから聞いたが、イギリスに行っていたのか?」
「はい」
「ふらふらしてないで腰を落ち着けたらどうだ」
「ふらふらしているわけではなくて、夢のためにイギリスに行ってたんです」
「ばあさんがそう言っていたな」
 どうやら二葉が祖母に話した内容は、すべて祖父に伝わっているようだ。
 祖父はこれ見よがしに大きなため息をついた。
「おまえは少しも父親に――良隆(よしたか)に似とらんな。良隆は地に足を着けた堅実な男だったのに。あの女に似たのか」
 祖父の言葉を聞いた瞬間、二葉は頭にカッと血が上った。怒りのあまり声を震わせながら言う。
「あの女って誰のことですか」
「おまえの母親だ。言わんでもわかるだろう」
「私のお母さんのことをあの女だなんて言わないでください」
「あの女はわしから一人息子を奪ったんだ!」
 祖父が声を荒らげた。
「奪ったんじゃありません!」
 二葉が大きな声を出したとき、祖母が二葉の腕を掴んだ。
「二葉ちゃん、おじいさんは手術を受けたばかりなの。お願い、興奮させないで」
 祖母は今にも泣きそうな表情だった。
 二葉は胸の中で渦巻く怒りを吐き出すように、大きく息を吐き出した。
< 93 / 204 >

この作品をシェア

pagetop