極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
(これでよし)
 ふと右側を見たら、彫りが深く華やかな顔立ちの女性が座っていた。三十代前半くらいで、落ち着いたブラウンの髪が肩のところで柔らかくカールしている。
 ニットワンピースを着たお腹はふっくらしている。マタニティ雑誌で得た知識からすると、五ヵ月くらいだろうか。
(五ヵ月って安定期だよね。安定期になったら、今まで以上にたくさん仕事をして、できるだけ多く貯金をしなくちゃ)
 出産後はしばらく働けないだろうから、と思ったとき、窓口の女性が「オオツキさん、オオツキナミさん」と患者の名前を呼んだ。
「はーい」
 右隣に座っていた女性が立ち上がった。
 オオツキ。
 奏斗の名字と同じだ。
(ダメね……)
 なにをしてもすぐ彼に結びつけてしまう。彼は二葉のことなんて忘れてしまっているだろうに。
 二葉は軽く首を横に振った。
 オオツキナミという名前の女性は、会計を済ませて自動ドアから病院を出て行った。続いて二葉の名前が呼ばれる。
「栗本さん、栗本二葉さん」
「はい」
 二葉は会計カウンターで告げられた金額を支払い、鉄剤を受け取った。財布をバッグに戻して自動ドアに向かう。
 外に出ると、スロープの手前にナミが立っていた。誰かを待っているらしく、すぐ横の駐車場の方を向いている。
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