極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉はナミを避けて、スロープの横の段差を下りようとした。
 そのとき、ナミが手を振りながら声を上げる。
「カナト!」
(カナト!?)
 二葉は驚いて反射的に駐車場の方を見た。すると、駐まったばかりの黒のSUVから、一人の男性が下りてくるのが目に入る。白いカジュアルシャツに細身のジーンズというラフな格好だが……間違いなく大槻奏斗その人だった。
「待たせたかな?」
 奏斗の声が近づいてきて、二葉はパッと視線を逸らした。
(嘘)
 ドクンドクンと鼓動が頭に響く。
 ナミは奏斗と同じ大槻という名字で、妊娠五ヵ月くらい。
 二葉が奏斗と一夜を過ごしたのは一ヵ月と少し前。
(……最初から……彼にとって私とのことは遊びだったんだ)
 それを認識した瞬間、視界が真っ暗になって、立っていられなくなった。
「あ」
 貧血だ、と思ったときには、体は左側に大きく傾いていた。
(ダメ、段差から落ちちゃう。赤ちゃんを守らなきゃ……!)
 視界が利かない中、お腹を両手でかばおうとしたとき、腰を誰かの手に支えられた。気づいたときには広い胸の中に閉じ込められていた。
「二葉!?」
 耳元で懐かしい声が驚いたように言い、二葉はギュッと目をつぶった。
「どうした? 具合が悪いのか?」
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