ハイドアンドシーク
「ってことは、"運命の番"でもないってことだ」
「……あんなの、運命でもなんでもない」
「君、案外リアリスト? ま、そりゃそうか。あんなの都市伝説みたいなもんだしね。でも、」
そういって距離を詰められたとき、わたしは別のことを考えていてすぐに反応できなくて。
はっとしたときには、時すでに遅かった。
「男はね、好きでもない女とも簡単にヤれるんだよ」
「……っ、やめっ、」
また触られると思った。
今度はさっきよりもずっと乱暴に。
けれど進路変更をするように、葛西くんが直前で受け止めたのは、横から迫ってきた拳。
わたしのじゃない。
「誰の許可得てそいつに触ろうとしてんの」
低く、余分な感情を抑えたような。
それはこうして離れていた間も、片時もわたしの脳内から離れることのなかった声だった。