ハイドアンドシーク
「……なあ、お前あの街で」
「ん?」
仰ぐようにこちらを見上げるその瞳は、おだやかな海のように凪いでいた。
言いたくなったときに言えばいい。
いつかそう言ったのは、俺だったはずだ。
なんでもないと告げると、向こうもそれを察したように笑い、それからベッドに横になった。
寝るにはまだ少し早い。
「ちょっと休みますね」
「ん。起こすか?」
「だいじょうぶ。ありがとう」
ぱち、ぱち、と。
ゆっくり何度かまばたきしたかと思えば、そのまま瞼を閉じてしまった。