ハイドアンドシーク


ベッドで丸まる影がひとつ。

よほど疲れていたのか、とっくに寝入っている。


昼間にあれだけ死守していた首を俺にはあっさり晒したこともそうだが、葛西に見せていた警戒心はまるで感じられない。



「……番、か」


アルファ、オメガ間でのみ発生する繋がり。

ともすれば血よりも濃いと言われているそれは、生きていてあまり馴染みのない言葉だった。


そもそもオメガのことも数ヶ月前まではよく知りもしなかったのだ。

れんがオメガだと分かり、それまで寓話のように感じていた第2の性が一気に身近になった。


番のいないれんは、突発的なヒートを乗り切る術がない。

そんなとき俺には何もできない。


薬は周期に合わせて服用するから意味があるのであって、即効性のある万能薬はまだ開発されていなかった。

そんな中で傍にいようものなら今度はこちらがあてられてしまう。


しかし、番になれば。

今日のように葛西に絡まれることも、副作用のある抑制剤を飲み続けることも、急なヒートに見舞われることもなくなる。


……、……ただ、それは


< 126 / 219 >

この作品をシェア

pagetop